なぜ、安直なオウンドメディアがこんなにもたくさんあるんだろう?

「現代のビジネスでは、インターネットの活用が成功のカギを握る」は大企業・中小企業、商店などの間で常識でしょう。企業相手のセミナーなどでは定番のテーマです。その「インターネットの活用」の具体的な方法として、多くの企業や商店が自前のサイトを持っています。「オウンドメディア」というわけです。ただ、うまくいっているのはどのくらいあるのでしょうか。

よくわからずに始め、よくわからないまま運営もしているオウンドメディアは多い

私はライター兼カメラマンとして活動しています。その中で見えてきたのは、「『ネット対策は大事だ。企業が所有し、自ら消費者に向けて情報を発信するオウンドメディアは不可欠だ』とわかっているふりをしながら、本気ではそう思っていない企業も多いらしい」です。

コンテンツマーケティング成果が出ていない企業は約半数

私が参考にさせてもらっている『オウンドメディアのやさしい教科書。 ブランド力・業績を向上させるための戦略・制作・改善メソッド』(山口 耕平・徳井 ちひろ著、エムディエヌコーポレーション刊)にでてくるデータがあります。この出版社がリサーチ会社に依頼して、企業のWeb担当者に対しアンケートを実施しました。「『コンテンツマーケティング』について成果は出ましたか?」の問いに対し、「出ている」が45.5パーセント、「出ていない」が54.5パーセントだったそうです。

コンテンツマーケティングには、メールマガジンやセミナーなども含まれます。多くの企業が実践し、代表的なのは、オウンドメディアでしょう。オウンドメディア単体で考えても、「出ている・出ていない」の比率はほぼ同じではないでしょうか。

効果が出ている・出ていないを判断するにも知識が要る

ただ、私自身はこれまで出会ったWeb担当者や、間に入っている業者の様子から、「これでも、実際よりは『出ている』の比率が高い」と考えています。「『効果が出ている出ていない』を判断するにも、きちんと取り組んだ担当者でないとできない。適当にやっている担当者は多い。彼らは甘い評価をしているだろう」が理由です。

その知識とは、「訪問者数」はもちろん、「離脱率」「読了率」「滞在時間」「コンバージョン率」などです。訪問者数にしても単に数だけではなく、自分たちの商売上のターゲットとなる層がどのくらい占めているかもチェック項目として外せません。決して少なくない割合の担当者は、これら基本中の基本の用語でも理解してなさそうです。

Googleペナルティ級に検索順位が低くても放置する有名企業

こういったやる気のないオウンドメディアの中には、経営不振だった伝統企業を再生させたとして、経営者がしばしば大手新聞・全国放送にも登場する企業のものもありました。

そこに3本の記事を納品しましたが、読者からの反応など手ごたえらしい手ごたえはありません。

それもそのはずです。その企業に関連の深い「伝統工芸」「焼き物」などをキーワードに検索順位をチェックしてみましたが、いずれも「圏外」でした。「100位にも入っていない」わけです。これではだれの目にも触れません。

「ここまで検索順位が低いのは、おそらくは何らかの理由でGoogleペナルティを食らっている」と考えました。Googleペナルティとは、Googleの提示するガイドラインへの違反に対する罰のことで、検索順位を下げるのはその典型的なやり方です。

編集者に指摘しても放置されました。私の担当者として日ごろやり取りしている同社の社員です。上役に連絡を入れると、「お前は黙って原稿だけ書いておけ」と、誇張ではなくほぼこの表現のメッセージが返ってきました。

「報酬をもらって終わり。あとはどうなろうと知らない」といったライターもいるでしょう。私はそういう方針ではありません。ちゃんと読者に届かないと、モチベーションが上がらないのです。

オウンドメディアには、企業ならではのだらしなさが出る場合がある

こういった企業はおそらくは、「オウンドメディアを使うことで、何を達成したいか」「どの程度達成できたかをどういった手段で評価するか」を意識しないまま、始めてしまい、しかも、「効果がなかったことの責任はだれもとらない」といった状況でしょう。

個人でもブログを安直に立ち上げる例は多い

おそらく個人でブログを立ち上げた経験がある人は、ほぼ間違いなく経験するでしょう。

・ブログサイトの体裁を決め、何本か記事も投稿をした

・訪問者数をチェックする機能をオンにした

・「どれだけたくさんの人が見てくれたか」とチェックしたが何日たってもほとんど訪問者はいない

これを経験して、ようやく気がつくのです。「どうやら、『ブログがある』だけではだれも読んでくれないらしい」「訪問者を増やすには、『SEO対策』とかいうノウハウがあるらしい」

ここから本気で取り組んだ人だけが、ブログを成功させるのではないでしょうか。

オウンドメディアには十分な人数と能力の担当者が用意できない

ところが、これが企業のオウンドメディアになるとどうでしょう。

・「わが社もインターネットを活用しないといけない」とオウンドメディアを立ち上げが決定される

・担当者が決められる。少々の大企業でも、その担当者は1人で、しかも専任ではない例も少なくない

・IT関連の企業でもないならば、あるいはIT関連であっても、もともとオウンドメディアをわかっている社員はいない

・担当者は急造で、しかも、個人のブログのように自ら進んで始めたわけではない

・担当者を決める・担当者の仕事ぶりを評価する上役も、ネットやオウンドメディアがわかっていない

かくして、やる気のない担当者、あるいは、簡単に自己満足してしまう担当者によるオウンドメディアが世間にあふれるのです。

ライターやカメラマンには変えられない 出会いを待つだけ

先に挙げた「経営者がしばしば大手新聞・全国放送にも登場する企業」も一例ですが、なんどか、こちらから働きかけて目覚めてもらおうとしました。しかし、無駄でした。

彼らはサラリーマンです。決して立場が強いわけではない外部のライターの提案は受け付けません。オウンドメディアを放置しても、多くの場合、社内での評価は変わりません。自ら変化する必要性も感じないでしょう。少なくとも、今まで私が出会った、オウンドメディアの担当者はそうでした。製造業や小売業、一般的なサービス業の人らにしたら、オウンドメディアは本業ではないのです

また、私自身が企業の社員として、外部の人たちと接触した経験があります。「やはり変わろうとはしなかっただろうな」と想像しています。

身も蓋(ふた)もない結論ですが、「オウンドメディアに本気のところに出会うしかない」「もし、出会ったら、ラッキーだ。そう思って全力を尽くそう」と思うばかりです。

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