下手な写真を撮ってしまう理由、 使ってはいけない理由

実際にそういう例を見たわけではありません。しかし、簡単に想像できます。味覚音痴の人はまともな料理人にはなれません。「辛すぎる・甘すぎる」「生臭い」「味がしない」などがまったく気にならないようならば、お客にも平気で失敗料理を出すでしょう。

写真も同じです。ほかの人が撮った失敗写真を見て「まともに情報が伝わらない」「見ると嫌な気分になる」と気が付かない人は、撮影する側に回ったときには失敗写真を平気で撮り、人にも見せるのは想像がつきます。

見せたい相手も“写真音痴”ばかりならば、問題はないかもしれません。しかし、相手がまともな人たちならば、あなたの撮った写真からは目をそらしてしまいます。

写真には、じっと見ていられるものと、すぐに逃げ出したくなるものがある

「写真には上手なものと、そうでないもの、見ただけで気分が悪くなるものがある」に異論を唱える人はそうはいないでしょう。しかし、実際に撮った写真や、何枚もある中から選んでサイトなどにアップした写真などを見ると、「本当にわかっているのか」と言いたくなることが少なくありません。

写真は、同じものを撮っても、撮り方次第で印象が変わる

まずは、この写真を見てください。多くの人は、これだけ見れば、問題のない写真と考えるのではないでしょうか。

被写界深度(ピントが合っているように見える奥行きの範囲)を大きくし、光は全体に均等に当てた写真。

次の写真を見てからならば、どうでしょうか。どちらの写真の方が長く見ていられるでしょうか。

上の写真とは逆に、ピントは上にいるコイ、それも目だけにピントを合わせた。光は斜め上から当てている。

「あとの方の写真」との答えを期待しています。では、なぜあとの写真の方がいいのでしょうか? それがすっと答えられるのならば、写真音痴でも初心者でもないと思います。

今まで、周りをみてきた経験でいえば、写真音痴の人たちは「写真には、いい写真と悪い写真がある」と考えてみたこともないようでした。「いくらかでも、これら2枚の違いに気がついてもらいたい」と願って、出しました。

大半の人は、「写真の良い・悪い」「失敗している」を指摘できるわけではない

1枚目の写真でも、普通は「悪い写真」とまでは呼ばれないでしょう。というのも、現実には、「ピンぼけしている、手ブレしている」「構図はデタラメ」「色が変」といったとんでもない写真が世の中にあふれています。

そういった写真であっても、「ここがダメ」と指摘できるのは、ほんのひとにぎりの人間しかいない気がします。たいていの人は、「なんとなく嫌な感じはするけど、理由はわからない」で終わりではないでしょうか。

どんなに下手な写真でもクレームがつけられることは少ない

SNSなどに自信作をアップすると、多くの人が反応してくれ、ほめ称えてくれるかもしれません。ただ、SNSの反応は気まぐれなので、反応の大きさと写真の質は比例しません。また、写真の質だけが反応の大きさが決まる要素でもありません。

逆に、下手な写真をアップしたらどうでしょうか。これも写真の質だけで反応が決まるものではないものの、多くはスルーされます。「つまらない」「ここがダメ」などわざわざコメントをつけられている写真は見たことはありません。

おそらくは、ヘタな写真を見た人の大半の人は、ちらっと見ただけで視線を外しているだろうと思います。また、ちらっと見ただけで人を去らせてしまうからこそ、ダメな写真です。

「どこが失敗か」をわざわざ考えるのは、私のように「なにか写真関連の話のネタはないか」と探している人間ぐらいでしょう。

下手な写真を掲載すると訪問者は逃げ、サイトの信頼度も下がる

「ヘタな写真を見た人の大半の人は、ちらっと見て視線を外す」によるダメージを軽視してはいけません。遊びで出しているSNSやサイトではなく、多くの人に見てもらうことでの成果を期待している場合は特にそうです。企業のオウンドメディアが典型です。

(1)理由はわからないままに写真から嫌な感じを受け、目をそらしたときに、ついでにサイトからも立ち去ってしまう。これでは、直帰率は上がり、読了率が下がる。

(2)ちらっと見ただけでも、「あれ、素人写真だな」ぐらいの印象は受けているかもしれない。となると、「どうせ、文章も素人が書いたものだろう」との印象を与えてしまい、記事全部やサイト全部の信頼性が下がる。

逆の経験は日常的にしているのではないでしょうか。企業のオウンドメディアで写真が「プロが撮った」「どこかの写真ストックサービスからの借り物ではなく、この記事のために撮影した」「ちゃんとお金をかけて作ったサイト」と思える場合はありませんか? そのときには、記事やサイトに対して信頼度が上がるだけではなく、その企業への評価も上がっているのではないでしょうか。

下手な写真が平気で使われるようになったわけ

「比べる時代が古すぎて、実感がわかない」と言われてしまうかもしれません。それでも話を続けると、こんなにも多くの下手な写真を目にするようになったのは、SNSが出現し、スマホも普及したためではないでしょう。スマホがあるために、多くの人が特段写真に興味がなくても普段から(内蔵)カメラを持ち歩き、SNSのおかげでだれでもそのスマホで撮った写真を公表できるようになりました。

以前は、カメラはわざわざ買うもので、「よし、写真を始めよう」と決断してから手にしていました。そういった人たちの多くは、『初心者向け、写真の撮り方』の本ぐらいは目を通したものです。

また、メディアが新聞・雑誌などに限られていました。掲載される写真は、プロやいくらかは心得のある人が撮ったものです。また、チェックも入るので、あまりにひどい写真は不採用になります。今でもこういった世界は残ってはいますが、比重は年々下がっています。

こんな写真は撮ってはいけない、使ってはいけない

水平が取れていない(斜めになっている)写真。意識してみると、「ずいぶん傾いている」と思うだろうが、SNSではこの程度ならばごく当た見かけるのではないだろうか。

ほかのページでも論じる機会があると思います。ここでは「どんな写真が失敗か」の、もっともありうるパターンを3つだけ紹介しておきます。

・水平が取れていない(斜めになっている)

見る人に不安を与えます。ビルや地平線など、本来、垂直・水平なものを写した場合、いっそうこの不安感が増します。

・ピンぼけ

「ピンぼけはダメだ」は「いまさら、言われなくても……」と思った人もいるでしょう。しかし、「どのくらい厳密にやらないといけないか」については、承知しているでしょうか?

仮にバストアップ(みぞおちあたりから上)のポートレート写真を撮るとします。もし、最大に被写界深度を小さく(ボケを効かせる)場合、ピントを合わせるのは、レンズに近い方の目です。もう一方の目や鼻の頭に合っていたら、失敗です。

・串刺し・首斬り

背後の観葉植物などのインテリアが目立って、人物がかすんでしまう写真もよく見かけます。こういった、「背後がスッキリしていない」パターンに入れていいのが、「串刺し写真」と「首斬り写真」です。

「串刺し写真」は頭のてっぺんに垂直に縦の線が降りてきているもの、「首斬り写真」は首の後ろで水平に線が横切っているものをいいます。

それらの線になるものは、窓枠、ホワイトボードの縁、電柱や道路標識など様々です。見る人にすれば、いったんこれらの線に目がいってしまうと、その線の上を視線がたどってしまい、主役である人物へはなかなか戻ってきません。

下手な写真を回避するのに、センスは要らない

「上手な写真を撮るには、センスが必要なのでは?」と思う人もいるかもしれません。確かに、芸術レベルでやるのならばそうでしょう。

しかし、ここに挙げた「水平」「ピンぼけ」「串刺し・首斬り」は、「やってはいけない」と知識として持ち、撮るときに注意をすれば、ある程度は回避できます。ですから、まずは写真についての知識を深めましょう。

そうしているうちに、ほかの人が撮った写真を見ても、「ここがダメ」「自分が撮るときは、こうしよう」と考え始めるはずです。

こういった努力もせず、下手なまま、無神経な写真をアップしていたとしたら、かなりの確率でサイトの足を引っ張っています。

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